KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

第32回兵庫県中学生ラグビー大会を観戦し心震えた。

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西に向かって電車乗り継ぎ新開地で乗り換える。
地下道を歩く。

まずは地下道左手一面に描かれた「壁画」に目が点となる。
風変わりというより薄気味悪い。
一体どんな経緯でこういった奇っ怪な作品が公衆の面前晒されることになったのだろうか。

翻って右手側を見ると、設えの柵の向こうに卓球台が並ぶ。
20卓は優にあるだろう。
延々と卓球台が続く。
何組かが卓球のユニホームをきちんと着用し無表情寡黙にラリーしている。

絵につづいて地下道左手には古本屋の巨大な書棚が並ぶ。
仰々しいような古書が壁一面所狭しと敷き詰められている。

この地下道はとてもシュールだ。
屋外では手をかざすほどに眩い秋の青空が広がっている。
外界と繋がっているとはとても思えないアナザー・ワールド。
新開地の地下道は異界と接っしているとしか思えない。


単線の鉄道で北へ向かう。
終点間近、緑が丘駅で下車する。

第32回兵庫県中学生ラグビー大会は三木総合防災公園で今日、開幕の日を迎える。
競技場までは駅から4km強。
我らウォーカー、4km程度なら健脚を発揮する。

身中に残存する雑念や夾雑物といったものすべて吸い取ってキレイにしてくれるかのような、清々しくあまりに快適心地良い秋空のもと、家内と歩く。

道なりにあった池町商店で稲荷寿司とちくわの天ぷらを買い、旅の恥はかき捨てとばかり、行儀悪いが歩きながら食べた。
これが、うまいのなんの、近くにあれば我が家は池町商店の常連となることだろう。


到着したとき、競技場では尼崎ラグビースクール対三田ラグビースクールの試合が行われていた。

試合終盤にかけ、壮絶とも言えるぶつかり合いが繰り広げられている。
激しい当たりの応酬で、激突の度にカラダ軋むような重たい音が響き渡る。

尋常ではない激しさだ。

呆気に取られ見入っていると、ほどなく終了のホイッスルが吹かれた。
僅差の勝負、尼崎が三田の猛追を振りきったようだった。

三田の選手が何人も泣き崩れる。

秋季大会である。
中学3年生は、所属したラグビースクールで過ごした長い年月をこの大会で締め括ることになる。
小さなラガーマンたちにとって歴史の節目であり、最後の集大成を見せる大切な舞台だ。

そして、敗れれば終りとなる。

あともう少し、あともう一息というところ、その僅差は遠く、三田は尼崎に振り切られ、手が届かなかった。

中3生が心中に秘めていた強い念が、溢れだし、涙となる。
その涙がじわじわと周囲に広がっていく。


西宮チームは一矢は報いたものの、明石ラグビースクール相手に為す術がなかった。

力とスピードに圧倒され太刀打ち出来なかった。
所々いいプレーがあっても、チャンスの兆しが訪れても、出足に勝る明石に「芽」の段階であっけなく潰され、おまけにことごとくボールまで取られ、明石の俊敏な走り屋達にいいように翻弄されることとなった。

明石チームのボール奪取の執念と躍動感ある走りだけが印象に残った試合であった。

明確に走り負け、明確に力が足りず、西宮の選手はグランドのなか孤立し続けた。

試合後しばらく、西宮チーム中3の号泣がやまない。

最後の試合、皆と戦い勝ちたかった。
せめて相手に拮抗し渡り合いたかった。

結果は惨敗。
苦杯がシンプルに教えてくれる。
もっと強くなるだけのこと。
そう学んで悔しさをも糧とするしかない。


続いて、全国大会準優勝の伊丹ラグビースクールが現れた。
序盤から伊丹のペース。
危なげないどころか、全く寄せ付けない。

フォワードは強く速く安定している。
右サイドでフォワードが十分なタメをもって起点を作ると、バックスがズラリ左サイド手前まで等間隔で並ぶ。

どこにボールが出てもトライまで走破できるバックスが多彩なパス回しで相手をかき回していく。
フォワードはその動きにぴったりついて次々波状で起点を形成していく。

さらには不意のキックでボールを前線に繰り出し戦局を左右に振っていく。
ボールの磁力に引き寄せられるように伊丹フォワードが真っ先にその軌跡を辿り、後ろを見ればバックスの陣形がもう整っている。
相手の態勢はますます崩れていく。

常に伊丹のペースで試合が動く。
対戦相手の選手は、まるでエキストラのように影が薄く、伊丹選手の後景に遠のいていくかのように見える。

スピードとスタミナとガッツで互角に渡り合い、それに加えて一対一のコンタクトで圧倒できる選手を軒並み集めない限り伊丹には勝てないだろう。



帰途、長田に寄り牛車を訪れた。
家内と二人ビール飲みハイボール飲み肉を焼いて海鮮焼いて、そして中3生の涙について語る。

私たちも中3生の涙から大切なことを学んだような気がする。

子らの分の肉を焼いてからお勘定。
店のお姉さんが言う。
しめて1兆6800億円。

財布に2兆円あった。

何とか足りた。


JR神戸線普通電車、並んで座ってのんびり帰る。
と、塾から私の携帯に電話がかかる。
何かあったのか、と慌てて家内が出た。
うちのテルテル坊主くん、テスト頑張ったということだった。

電車の車内、家内が電話で話す声を聞きながら悦に入る。
周囲の迷惑に思い当たるには、二人は酔いすぎていたようだ。

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