KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

冷え込む夜はAMラジオがよく馴染む。


夕刻過ぎ、仕事場近くの商店街をぶらつく。
あれよあれよと言う間、ここも年の瀬の賑いを増していくのであろう。
満海で数種の焼き魚を買い込む。

カンパチのガシラ、ブリ、塩サンマ、シャケ。
幾つかは今夜の酒のお供とし、幾つかは家で誰かしら食べるだろう。

好き嫌いはない方だが、これまで好んで焼き魚を選ぶということは皆無であった。
定食屋で焼魚定食を注文することなどあり得ないことであったし、焼魚定食を喜んで食べる人がいれば遠い眼差しを送っていた。

それがここ満海で肴を見繕うようになってからは様変わりした。
刺身類は当然のこととして、鍋用も焼物も満海の品はかなりイケる。

40代半ばにして、私は魚党となった。

買い物した足で駐車場に向かい後部座席に品々を放り込む。
こうまで冷え込めば車内で十分保冷できる。

サウナで汗を流し、ちょうどよい時間帯。
二男の迎えのためクルマを走らせた。


AMラジオをNHKに合わせる。
古臭いような地味で丁寧なアナウンスとともに大昔の曲が流れる。
遠い昔に時間が巻き戻っていくかのよう。
耳にしたこともない曲であるが、なぜだろう夜の車内に懐かしいような空気が満ちる。

みなと通りから本町通りに入っていく。
土曜夜のビジネス街、NHK的音調もあいまって盆や正月の光景と見紛うほどに静まり返っている。

谷町筋に入るとき、とても強く印象に残る曲が流れた。
新橋二丁目七番地。

40年もの長きに渡って東京新橋の地べたに座り続け、靴磨きに勤しんできた名物母ちゃんをテーマにした曲である。
歌詞がいい。

くつをみればその日の苦労が分かる、、、一杯飲めば人間なんて立ち直る、、、
、、、つらい気持は靴みりゃわかる、、、今日もあなたはがんばった、、、

ド・ストレートな歌詞が心に沁みる。
人生の大先輩に温か労われるような気持ちとなってくる。

ほんと昔はいい曲がたくさんあったのだと日本人共有の郷愁に心地よく浸る。

歌が終わり、曲の解説がされる。
ごく最近のヒット曲であるということだった。

私ははじめて聴いた。
ラジオもたまには違う周波数にしないと世界はどんどん狭くなっていくばかりである。


いつもの定位置で二男が現れるのを待つ。
その間、長男のツイッターをチェックする。
おっ、あっさりと却下されたはずだったラグビー部創設案が現実味を帯びてきたらしい。
漏れ聞こえてくる上層部の前向きな声を彼は伝え部員を募っている。
ツイッターについては案外正しい使い方をしているようである。

お迎えの車両が増え始め、ふと目をやると塾入口が賑わしくなっている。
授業が終わったようだ。

と、信号待ちで友人らと楽しそうに話す二男が見える。
一人ぽつねんと立つ姿より、仲間と談笑している姿見るほうが親としては嬉しいことである。

すでに私のクルマを見つけていたのだろう、信号が変わり、二男がまっすぐこちらに向かってくる。

今夜のテーマ曲をセットする。
オースティン・パワーズ・デラックスのサントラだ。

二男が助手席に座ると同時、マドンナのビューティフル・ストレンジャーのイントロが流れ始めた。