KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

激務も適量ならいいクスリ


露天設置の塩サウナが底冷えするくらいこの夜の大阪はえげつないほどの寒気に覆われた。

寒いからこそ人は風呂に集い、しかし人の出入りが激しものだから、戸が頻繁に開け閉めされ、あちこちから寒風が吹き込んでくる。

無思慮に戸を大きく開け、しかもすぐ閉めずにぼんやりしているウツケだらけであったせいで、風呂場の暖は温まる端から奪われ続け、善良な市井の民は、裸体の身の置き場なく、チンチンぶらぶら露頭に迷い、しかし次第に当のぶらぶらもすっかり縮み上がって、このままでは風邪をひいてしまう、そうなっては元も子もないと多くは家へと急ぎ引き返すのであった。

しかし、上方温泉一休の駐車場は夜が深まるにつれ満杯の度を増すばかり。
ここは暖かいに違いない、そう早とちりする輩が後を絶たない。


私もその早とちりの一人であった。
年末の激務の真っ只中。
一日たりとも風邪でダウンする訳にはいかない。

たかが数百円。
風呂のお代など惜しんでられない。
寒いと感じた即座、引き上げることにした。

クルマを走らせ自宅に戻る。
この冬、我が家は暖房に力を入れている。
どこもかしこもふんわりとした暖かさに満ちている。

ステーキ食べる子らの横に腰掛ける。
私の前に差し出されたのは、牡蠣の小鍋とおでん盛り合わせ、後はサラダ、&、なんだか訳の分からないキノコ類、そしてニンニクのボイル揚げ。

ちょっとあんまりではないかと不平を口にするが、前夜アンコウのキモを食べ過ぎたことを見透かされている。

素直に従う風を装い、世の善意に期待を寄せる。
果たせるかな、子らは心得たものであった。

無尽蔵に食べ続ける子らが、山の神のスキをついて、ステーキの切れ端をトスしてくれる。
その施しに涙浮かべながら、大喜びでパクツク食欲旺盛な父はまるで水族館のオットセイみたいなものであっただろう。


土日も仕事し、そして、その勢いに乗れば、いたって平然と月曜も仕事に入っていける。

月曜だと気が塞ぐ、滅入ってしまって息すら苦しい、というのが世間相場であるが、それは土日にすっかり休んでしまうからであって、慣性の法則という観点で見れば当然のことであり、また中学で実験した通り、静止摩擦係数は動摩擦係数よりも必ず大きく、そりゃ、完全停止してまた動き出すのは骨が折れて当たり前のことなのである。

南の島の太陽に手をかざしプールでぼーと揺蕩う無為の時間を夢想しつつ、ああ、明けない夜はないのだと言い聞かせ、自らをなだめすかして今週も仕事に励む。

収束地点が見えている。
いつか終わるからこそ頑張れる。

あと二週間、クソ真面目に行儀よく端から端まで仕事し続ければ、解放される。
無限に続くならまさに生き地獄かもしれないが、たまにであれば、これも勉強。
仕事のたいへんさを骨身に沁みて、厳か一年を締め括る。

地に足ついて生きるには、激務も適量必要なものなのだろう。