KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

クエ食べて男子達は第二の産声を上げた。


一月七日先負の日、二男を上六の塾まで送った足で、午後一番家内とともに、清荒神に向かった。
山間の冷気に身が引き締まる。
お参りし学業成就の祈祷を申し込む。

引き続き西宮神社へとクルマを走らせる。
十日戎にはちと早いが年々混雑度が増すばかりのえべっさんである。
時期をずらして笹を買うのが賢明だ。

その道すがら、上ケ原台地を駆け上り門戸厄神東光寺を訪れた。
学業成就であれば素通りする訳にはいかない。
大一番の日が刻一刻と迫る。
魔除けの矢、破魔矢を買い入れ必ず携えなければならない。


門戸厄神東光寺を山腹に頂く上ケ原台地の麓、駅間近に、名店きらく寿司がある。
階上には、おそらく西日本一美味い蕎麦屋であろう夢打庵があるので、この一角だけで蕎麦に寿司にと日本を代表する食を堪能することができる。

鷲尾先生の小学校の同級生がきらく寿司の店主である。
名人芸奮って珠玉の魚をお客に振る舞う。
その仕事ぶりは超一級だ。

この日曜日、家族揃って招かれた。
朝にさばかれたばかりのクエが用意されていた。
クエと言えば魚の王者フグをしのぐ名魚として名高く、だからこそ滅多にありつけるものではなく、しかも旬の時期は12月から1月のみと限られている。
それはもう貴重な食材である。

私達家族は生まれて始めてクエと相まみえることとなった。
鍋を前に佇むクエの在りし日の姿を店主が写真で見せてくれる。
怪魚とも言えるほどに巨大で、威容放つほどのド迫力だ。

そして、そのトロケル美味さは、末永く我が家の語り草となることだろう。
肉厚、食感、弾力、脂の乗り具合、どれをとっても絶品で舌鼓は鳴りっぱなしとなったのであった。

終盤には淡路三年フグまで共演し、これはもう人生最後の晩餐であっても足りるくらいに凄味漂う内容であった。


思春期の寡黙を身に帯び始めつつある我が家の男子は終始緊張気味であった。
診察室でその姿見る鷲尾先生が側にいて鍋を司っている。
そりゃ緊張しても仕方ないだろう。

十代の伸び盛りをさあこれから突っ走ろうとする男子にとって、良き人物像が刻まれる素晴らしい食事となった。

長男、二男それぞれなにがしかの示唆を受け、親や教師があれこれ言うよりは遥かに効果的に強い動機付けの場となったことであろう。

タクシーを探しながら家族で鈴なり歩く帰途、子らが互い違いにクエ美味かったと漏らすその心地いいような嘆息に、末永く響く男子の産声が聞こえるかのようであった。

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