KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

前受け受験という必須の関門


どこにクルマを停めたのか、そんな些細なことさえ鮮明に記憶に残っている。

長男のときは松屋町筋を南へ下りマイドーム大阪を少し過ぎた商工会議所の前に横付けした。
二男のときはマイドーム大阪を正面に見る南新町の交差点にクルマを停めた。

会場が近づくにつれ朝靄の向こう無数にはためくのぼりが目についてくる。
あちこちに各塾のスタッフが陣取って物々しい。

運転しつつそれら光景が目に入り息呑むような緊張が高まってくる。
まさにいくさ場の様相であった。

長男のときは1月8日の火曜日。
二男のときは2年後同日の木曜日のこと。
本番となる統一入試日まであと10日足らずという時期である。

中学入試皮切りとなる前受け、緒戦の相手は函館ラ・サールであった。

戦意昂ぶったのかクルマを停めると子は一人勝手に降りて無言で会場に向かっていった。
長男もそうであったし、二男もそうであった。
後を家内が追う。

原色ののぼりを目にすれば、男子誰でも戦闘開始のスイッチが押されることになる。


前受けだからといって、気楽なものではなかった。
端から負け戦を決め込むのであればともかく、本番直前、自身の仕上がりを真正面から問い、本番の結果を占う実戦なのだと思えば、プルプル湧き上がる震えは止めようもない。

前日は早めに床につき、ゆっくり眠って朝6時に起きた。
6時半には支度を終えてまだ暗い地元の神社で白い息を吐いて手を合わせ、次第明け始める曇天の空のもと7時過ぎには会場に到着。
試験は9時前からであったが直前のウォーミングアップがあり塾の待ち合わせは7時半であった。

翌日の愛光においても全く同様のリズムで過ごした。
ここで本番に向けたルーティンが確立されたようなものであった。

愛光の試験会場は梅田であったがこのときも全く同じ。
のぼりが戦意をかきたて、クルマを停めるや否や子らは飛び出しスタスタと会場に早足で向かった。
家内がその後を追う。
長男も二男も全く怯むことなどなかった。


関西難関の入試日程を序破急で捉えれば、我が家においては函ラサが序で、愛光が破であったと言えるだろう。
入試の流れのなか主要な部分を構成していたといっても過言ではない。

やや癖のある出題がなされる函ラサが最初に来る。
調子は合わない。
揺さぶられる。
焦って取り乱す。
試験中に何とか立て直すという苦闘を繰り広げなければならない。

引き続く愛光はオーソドックスな問題傾向だ。
ここでぴったり調子が合ってくる。
入試に臨む必須の核のような部分に温か血が通い、これまでの勉強に自負のようなものを感じることができる。

そして、いよいよ序破急のうちの急となる数日がうち続く。

序と破で心身慣らしているので、毒気帯びるほどの緊張は抜け、周囲を冷静を眺めることができ重心低く呼吸穏やか落ち着いてことにあたることができる。

人間はそうそう緊張状態など維持できない。
最初に緊張のピークを持ってくれば後は意外なことに平穏だ。
慣れてしまえばこっちのものということであろう。

どんな緩急の間合いに襲われても、どんと来い、もはや調子は合うようになっている。


長男も二男も前受けによる精神的な揺さぶりを持ち堪え無事そのハードルをクリアすることができた。

本番もきっと大丈夫だ。
そのような御守を得たようなものであった。

だからといって、楽勝などということはあり得ない。
前受けが不本意な結果であってもすんでの所で巻き返し本番で吉報を手にしたという話も数々伝え聞いた。

この両日を一つの高みとして、本番のレベルが一段とアップすることになる。

単なるリハーサルというよりは、避けては通れない関所のようなものと言えるのかもしれない。
まさに序破急。
ホップステップを欠いてのジャンプはないということであろう。

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