KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

笑ってくれればそれで嬉しい


極寒の異国にあって独りこの日記を読む長男の姿が思い浮かぶ。

あれやこれや綴られた日常はどれもこれも取るに足りないことばかり。
しかし彼の地にあればノスタルジックな色彩を帯びて微か輝き視線注がずにはいられない。

ほんの束の間離れただけでもそのようになる。

この日記の面目躍如。
ずらずらと並ぶ文字列が七色に光る虹の架け橋となる。

旅立ちの日が刻一刻と迫る。


帰宅する。
ちょうど長男は西北へと出かけるところだった。
定期試験の結果など聞きつつまずまず頑張ったとその背を押して送り出す。

二男と夕飯。
試合に出られる。
スタメン出場が決まった。
二男がそう打ち明ける。

試験の結果がどうのこうのというより試合の話の方をこそ親は喜ぶ。
そうかそうか詳しく聞かせろと私と家内が二男ににじり寄る。


二男は学校について多くを語らない。
健さん風の侠気の男子。

だから他を経由して学校の様子などを知ることになる。

試験期間に先生が朝7時から質問受けをしてくれると先日は耳にしたが、どうやら母校星光の教師らはかつてに増して相当に熱心であるようだ。

放課後はもとより平素から朝7時に生徒を呼び出して早朝指導が行われるのだという。
朝7時と言えば、早い。

二男に聞くと確かにそうだ、7時に呼ばれている友達の姿を部活朝練の際に見かけたことがあると言う。
やはり星光の朝は早いようだ。

思いつきで継続できるようなことではない。
人知れずそのようにする教師らもなかなかの男気質だ、頼もしい。


火曜日の午後。
駅前の書店で装い新たとなった「ギャグマンガ日和GB1巻」を買い、自分用にとダニエル・ゴールマンの「フォーカス」を買う。

尼崎から西九条へと向かう電車の中であった。

さすがに阪神電車。
阪神電車に乗ればこの世に不思議なことなど何もないのだと知ることになる。

課題に向き合っていないとき脳は徘徊を始める、そのマインド・ワンダリングが脳のデフォルト状態であり、その際に脳は重要な問題解決のために活動している、書物の記述に惹きこまれ興にのってページを繰っていたところであった。

途中の駅で若い女子が乗ってきて私の前に座った。
スカートがミニ過ぎてパンツが丸見えである。
一瞬目を疑うが、完全無防備に開け広げ、目の前にはパンツ。

見ようとせずとも本に目をやるデフォルトの視線で視界に入る。
これは困ったことになった。

男子の矜持、視線を斜め方向にずらす。
しかし、完全には視野の外とはならない。
何もかもが窮屈に思えてくる。

次の駅に到着し電車が停まった。
あからさまに席を移るのも失礼なような気がして、電車を降りるふりして隣の車両に乗り直した。

これでまた正々堂々と本が読める。

西九条で降りる。
当の車両の前を通り過ぎる。

パンツギャルの前には一人のおじさん。
おじさんは虚空をじっと見上げ視線を固定している。

誰もがパンツを見たいわけではない。
車両のなかそのような表示がぜひとも必要であろう。


外気に触れてこその日記である。

これが引き出しの奥に仕舞われるものであったら、ミニのパンツの話など変態男の隠微な思い出のようであって不潔感漂う。

しかし、このようにお天道さまのもと記せば、記述は正気を保ちミニのパンツにすら爽やかな風が吹いて隠微が消し飛ぶ。

異国にあってこの日記を独り読む長男の様子が思い浮かぶ。
パンツのくだりで呆れ返って笑ってくれれば父は嬉しい。

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