KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

明け方5時の父子ラーメン


生まれて初めてのことだった。
朝5時、ラーメン屋にクルマを横付けした。
にんにくラーメン天洋は24時間営業。

朝食に何を食べたいか運転しつつ二男に聞いたところ、彼はラーメンと言った。
朝からラーメン。
私ども家族の男子であれば十分にストライクゾーンに入る。

しかし、丼鉢いっぱいにあふれるカロリーに朝からまみれるなど、どこかしらふしだらな、もっと言えば犯罪行為に手を染めるような後ろめたさを覚えなくもない。
だから、そのようなことがこれまで頭をよぎることはなかった。

ところが、この朝、二男ははっきり明瞭にラーメンと言った。

そしてお誂え向き、朝の5時に営業しているラーメン屋が道中にあって、ネオンが煌々と光っている。
そこまで条件揃えば、妖しく瞬くその光に吸い寄せられるのはやむを得ないことであった。


カウンターに並んで腰掛ける。
二男が味噌ラーメンと言い、私も付き従った。

朝っぱらなのに店は六分以上の客の入り。
夜勤を終えた人らがここでほっと一息、ラーメンすすってビール飲むといった様子に見える。

光に満ち始めた春の空の清涼とは隔絶した世界。
タバコの煙が目に染みる。

まもなく、わたしたちの前に濃厚で重量感あるラーメンの鉢が差し出された。
にんにくの豊かな香りが一気に食欲をかき立てる。

味は確かで食べごたえ十分。
うまい。

うますぎたのか、二男が言った。
替え玉下さい。

二男を一人孤立させる訳にはいかない。
わたしはここでも付き従った。
こっちも替え玉ね。


午前の事務業務を終え、わたしは昼からクルマで外回りに出た。
一向にお腹が空かない。
昼を過ぎても満腹感が維持されたままであった。

史上最強食は、やはりラーメンであろう。

わたしは食の煩悩から解き放たれて、まさに明鏡止水、最盛期を過ぎつつある街路の桜を目に焼き付け続けた。
ああ日本の春は美しい。

一方、二男の方は昼は昼で吉野家の牛丼を食べたという。
若さの違い。

下る人あれば上る人あり、ということだ。


夕刻、ちょうど同じ頃合いの帰宅となって二男と過ごす。
二男が買ってきたドリトス・タコス味を分け合って食べる。

彼によれば、タコス味は入手が容易ではないということだった。
だから見つけたときには好機を逃さず一度に二袋をゲットする。

仲良く交互にドリトスに手を伸ばしながら、映画「マッキー」を見始める。

主人公がハエに生まれ変わって仇を討つ。

わたしたちは大笑いし続けた。
最初のうちハエを気味悪いと思い、最後にはハエに愛着すら抱くような気持ちとなった。

恐るべき出来映え。
映像が素晴らしく奇抜なストーリー展開が心を掴んで離さない。
インド映画が世界最強、これは論を俟たないことであろう。


間もなく春休みが終わる。
このように子と一緒に過ごす時間はこの先どんどん先細りしていくのかもしれない。

二男にとっては何でもない平凡な時間であったかもしれないが、わたしにとっては非常にインプレッシブな一日となった。
だから記念に書き記す。

下る人あれば上る人あり。
自らは下っても、子がこの先ゆっくりゆっくり上っていくのだと思えば行先はどこであれ喜ばしいことこの上ない。

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