KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

世界をグランドビッグに広げたくなってしまう

学校帰りに二男が事務所に顔を出した。
近頃発売されたばかりのグランドビッグマックを携えている。

店先にデカデカと広告パネルが貼り出されていて嫌でも目に留まる。
日頃マクドに接しない少年であっても心揺さぶられ、気になって仕方ないといった風になる。

いつの日にかと時を待ち、この日学校帰りに彼はその夢の実現を果たしたのだった。

わたしも日頃はマクドで食事することはない。
しかし、目の当たりにしてしまうと関心を逸らせ難い。

ツバメ君を走らせ、わたしたちもそれを食すことにしたのだった。
おかげさま、夕飯無用というほどに腹が膨れた。

お腹が空かないのでいつもより割増で仕事する。
仕事終えても依然満腹。
走る気も起きず、夕飯も欲しくない。

それでお腹がこなれるまで映画でも見て過ごすことにした。
手に取ったのは「マダム・イン・ニューヨーク」。
インド映画だ。

主人公シャシは裕福な家庭の主婦である。
家族のために日夜料理の腕を奮う。
腕前は抜群なので、作ったお菓子を近所に振る舞ったりしては喜ばれている。

しかし、英語が苦手。
流暢な英語を話す家族のなか、少し引け目を感じている。

あるとき、ニューヨークへと一人旅立つことになった。
姪の結婚が決まり、式の準備を手伝わねばならない。

ほとんどゼロという英語力でシャシは本場ニューヨークに放り込まれることになるのだった。

シャシはそこで一念発起することになる。
四週間で英語をマスターできる、そう触れ込む語学学校の門をたたく。

クラスは様々な国籍と来歴の者らで構成されていた。
その交流が微笑ましく、実に楽しげではあるのだが、生きるために英語が必須となる皆の切実感のようなものも伝わってくる。

英語を学ぶことを通じ、シャシはこれまでとは異なる自分と出合うことになる。

映画ではやんわりとした表現に留まっているが、インド家父長制のもとシャシは夫に対し従属的な立場に置かれている。
極端に言えば家事や料理さえできればいいといった扱いだ。

ニューヨークにおいて英語を学ぶ喜びに開眼し、異国の仲間らと友情を育み、また一人の男性からは恋愛の対象とされ、シャシは一個の女性としての尊厳を生き生きと取り戻していくことになる。

このあたりの描写が実に素晴らしく、セリフが更に素晴らしい。
シャシに恋したフランス人男性に対するセリフがこれだ。

Shashi:
When you don't like yourself... you tend to dislike everything connected to you. New things seem to be more attractive. When you learn to love yourself... then the same old life... starts looking new... starts looking nice. Thank you... for teaching me... how to love myself! Thank you for making me... feel good about myself. Thank you so much!

自尊心が世界の見え方を変える。
自信を得てシャシは夫との関係、家族との関係をより良きものとしえ捉え直すことができた。

そしていよいよ、学んだ英語の力を証すとき。
朴訥とした語りにハートがこもっていて、シャシが結婚式でする祝辞のスピーチに感涙避けられない。

Shashi:
This marriage is a beautiful thing. It is the most special friendship. Friendship of two people who are equal. Life is a long journey. Meera, sometimes you will feel you are less. Kevin, sometimes you will also feel you are less than Meera. Try to help each other to feel equal. It will be nice. Sometimes... Married couple don't even know how the other is feeling. So... how they will help the other? It means marriage is finished? No. That is the time you have to help yourself. Nobody can help you better than you. If you do that... you will return back feeling equal. Your friendship will return back... Your life will be beautiful.

ニューヨークでの経験を通じシャシは夫婦のあり方についてこれまでにない視点を得たのだった。
そして、こう続く。

Meera... Kevin... Maybe you'll very busy... but have family... son... daughter. In this big world... your small little world, it will make you feel so good. Family... family can never be... never be... never be judgemental! Family will never... put you down... will never make you feel small. Family is the only one who will never laugh at your weaknesses. Family is the only place where you will always get love and respect. That's all Meera and Kevin... I wish you all the best. Thank you.

家族の定義としてそのまま使える名スピーチである。
この映画を見れば、ニューヨークに行きたくなって、英語を学びたくなって、そして家族を持ちたくなる。

内なる世界をグランドビッグに広げたくなってしまうような映画だと言っても過言ではないだろう。

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