KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

ゲームする姿が奇異に映って仕方ない

プクッとしたおデブちゃんがわたしの横に座ったはいいが、図体がでかいから膝があたって肘があたって居心地悪い。
手に持つ傘の柄を台のようにし彼はスマホでゲームを始めた。

雨に濡れた傘から電車の床へと雫が垂れ、スマホの画面が忙しなく瞬く。
横目に入るケバケバとした光が目障りで、膨れ上がって来そうな彼の体積に押されるようであって不快さが増していく。

彼の横顔をじっと見るが、彼はスマホの画面に心奪われ、わたしの無言の陳情には気付かない。

電車が揺れ、膝があたり肘があたる。
その度、強めの反作用で押し返すが、無神経な恐竜みたく彼は全く頓着する様子がない。

一応はスーツを着用しネクタイを締めている。
一見して廉価なものと分かるし首周りのボタンを外しているので、体型と相俟って、だらしないことこの上ない。

これでシャツがスボンからはみ出ていれば、だらしなさは完成形となり、更にもし社会の窓まで開いていたなら、勝負そこまでダメ押しテクニカルノックアウトというようなものであろう。

ゲームが佳境に入ったのか、画面の上を無骨に太い彼の親指がすばっしこく這い回り、強く激しく上下する。
ああ、わたしが画面なら耐え難い。
思っただけで、虫唾が走る。

しかし一体なぜなのだろう。
成人にもなって、こうまでゲームに夢中になれるものなのだろうか。
しかも公衆の面前、それを少し恥ずかしいと思うような矜持もないのか。

ゲームとの距離感が、どれどれと高みの見物するような風ではない。
どう見ても、まさにそこが全世界といった様子で没入している。

時間の使い途について経験値の浅い子どもならいざしらず、スーツでネクタイであるから社会人であることは間違いない。

社会人なら、いろいろあるのではないだろうか。
本を読むなり資料見るなり少し頭を休めたり。
電車の移動でゲームに全力投球するものではないだろう。
何をするのも自由であるが、奇異に映って仕方がない。

わたしにはその意義が全くもって分からない。

そして思う。
わたしに娘がいたなら、この男にだけは嫁がせない。

目の前の人間によりもゲームの方に関心示す種族に違いなく、娘が大事にされる訳がない。
現実世界に用はなく画面の向こうに幸福のリアリティがあるのだろうから、いっそのこと向こうで生まれた方が良かったのかもしれない。

彼の指の動きがどんどん加速していく。
だんだんとその様子が助け求めてドアをドンドンと叩くような姿に見えてくる。

扉が開き晴れて向こう側へと彼が招き入れられる日は、いつかやってくるのだろうか。

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