KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

夜の北新地はミステリアス・ウェイズで始まった


久方ぶり、朝の定食に納豆を選んだ。
ほかほかの白飯に生卵を落とし、よくかき混ぜた納豆にネギを添えて投入する。

飯をかき込んだ途端、まさにプルースト効果、過去が鮮やか蘇った。
東京で暮らしていたときのことであった。

そもそもわたしは大阪の下町育ち。
その食文化に納豆は馴染まない。
食卓に納豆が並ぶことはなく、そのネバネバは見目悪しく興味惹かれることすらなかった。

ところが、ある日ある時、やたらの存在感をもって納豆がわたしの視線を捉え、そして離さないということが起こった。

早稲田理工のカフェテリアが改装され、学食とは思えないほど洒落た雰囲気となった当時のこと。
どこかのだれかが納豆を食べていて、それがあり得ないほどに美味しそうに見えたのだった。

その様はどこからどう見ても美味しいとしか言えなかった。

それでわたしは意を決した。
人生初納豆初体験。
列に並んで納豆を手に取った。

見よう見まねでわたしは納豆を混ぜ、ご飯にのせた。
見たまま感じたまま、とても美味しいのだというイメージのまま、口に運んで頬張った。

そして次の瞬間、わたしは口ごもった。

衝撃を覚えるほどのまずさ。
わたしはどうしていいか分からず、身を固めたまま動けなかった。

ご飯をこれほど無駄にしてしまったことは生まれて始めてのことであった。

わたしが納豆と和解するのはこのときから10年も後のことであった。
わたしにとって納豆は食べ物のはずがなく、料理上手な女房をもらうまで、得体のしれない何か気色の悪い異物として存在し続けた。


野田阪神のすき家を後にする。

土曜朝7時の景色が新鮮に映る。
どこか旅先にでもあるような高揚と解放感を覚える。
すでに太陽は高く昇って強い光を放ち、朝の冷気は駆け足で引っ込みはじめている。

事務所へと歩を進めるうち、記憶が遠い昔からこちら側へと徐々に戻ってくる。

昨夜午後7時、夜の北新地はU2のミステリアス・ウェイズで始まった。
ずしり連続して耳に響くサウンドに合わせ足を運んで駅から3分。
クラッティーニは堂島レジャービルの6階にあった。

重い扉を開けると瀟洒な異空間が姿を現した。

わたしは相良さんの横に腰掛ける。
天六のいんちょと安本先生が並んで前に座る。

安本先生と言えば宝塚、宝塚と言えば清荒神。

清荒神からしばらく足が遠のいてることを突如わたしは思い出す。
二男の中学受験の合格祈願以来、訪れていない。
独立した当初から当地の火の神に手を合わせご利益に与ってきたし、子も中学に合格できた。

清荒神はそんじょそこらのパワースポットではなく決して軽んじることはできない。
また近々、家内伴いお詣りに出向かねばならない。


午後診を終えたタコちゃんが現れ、島田の話となった。
あれから四年、雪辱を果たして欲しいとの願いを皆が共有している。

しかし今回の河内長野市長選は前回以上に盛り上がりを欠き関心寄せられない選挙となるようだ。

大阪都構想の話が潰え橋下徹氏が政界を去って後、是であれ非であれ、なんだかぽっかり胸に穴があいたかのような空気が蔓延し、それは河内長野も例外ではないように思える。

地元の評判芳しくない現職と、依然として知名度さほどでもない島田の一騎打ちとなる様相だが、大半が無関心層であり、四年前以上にその度合は強まっているように思える。

四割を切った前回の投票率を更に下回る結果となるのは必至であろう。

クラッティーニの料理はどれもこれも微に入り細にわたり手が込んでいて、一口一口感嘆の声を漏らさずにはいられない。
料理が美味しくワインとよく合って、酒量が右肩上がり加速度的に増していく。

そうそうとタコちゃんに対しわたしは話を続ける。

先日の朝日新聞で砂原庸介氏の名を見かけた。
舛添知事辞任をめぐって現制度では党の責任を問い難いという矛盾について述べていて、なるほどと感心したのであるが、現在砂原氏は神戸大学准教授であるようだ。

島田も神戸大学准教授。

四年前、砂原氏が市大の准教授だった当時、河内長野市長選挙について述べたブログ記事が印象深かった。

河内長野市のような都市の周縁地域は中心部と異なり、従来勢力をどれだけ味方にするかが勝敗を分ける。
そのような内容であった。

河内長野の地域特性を思い起こせばまさに砂原氏の指摘するとおりであり、今回の選挙においては、自然風化的に現職が得票を減らすであろうから、この四年間、島田が地域に根を張って地道に掴んできた一票一票がものを言うことになるのだろう。

市長選の投票日は7月10日。
吉報を待ちたい。


そうこうしている間にボトルが7本空いて、お開きとなった。
わたしは森先生と鷲尾先生と連れ立って帰途についた。

森先生はイケメンにもかかわらず、話がたのしく親しみやすい。
独特の語りのリズムに優しい人柄が滲んでいる。

吹田の森内科クリニックにて繰り広げられるアットホームな診察の光景が目に浮かぶ。

次の日は土曜日であるが、わたしは仕事、もちろん森先生も診察、鷲尾先生は診察の後、肌アレルギーに関する学会があって遠方にまで足を延ばし研鑽に充てるという。

あと一日奮闘し、日曜になってやっとほっと一息つける。

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左隅の影は相良さん。