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KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

今日も明日も階段を駆け下りる

始発電車で事務所に向かう。
同じ時刻、同じ車両。
周囲の顔ぶれはいつも同じだ。

電車は大阪へと向かう。
途中の駅から乗ってくる顔ぶれも決まって同じ。

年配の方の姿がやたらと目立つ。
朝一番の電車は思った以上に混み合って、初老の域のご婦人であっても席にはありつけない。

お年寄りとも言っていい年齢の方々が黙って俯いて手すりに掴まり、そして電車に揺られる。
その姿を見ればどうしても考え込まざるを得ない。

日常のありふれた光景のなかこの国の真実の姿が如実立ち現れる。

大阪駅のホームに電車が入る。
車両の出口に人が集まる。
扉が開くと一斉に走りだす。

電車は待ってくれない。
時間に猶予はなくスムーズな乗り継ぎを果たすためには急がねばならない。

皆が皆、わたしを追い越し階段を駆け下りていく。
大勢の人がせわしくなく足を運ぶ様子はまるでなにかのコンペティションさながらだ。

来る日も来る日も電車に揺られ、乗り換えのために階段を駆け下りる。
そう夢見た人生であったはずはないだろうが、そうせざるをえない。
つべこべ言っても始まらない。
乗り遅れまいと誰もが黙って駅の構内を駆けていく。

いまや平均的な日本人であってもその所得は先進国水準で言えば最下層の部類に入る。
大学を出ようがそこそこましな企業に勤めようが、他の先進国で言えば下層グループ並の収入でしかないという日本の実情についてはまだあまり知られていない。

始発電車で勤めに出る初老の方々の賃金など推して知るべしであろう。
階段を駆け下りる背からは、順風満帆で笑いが止まらないといった様子は一切窺えない。
誰もが毎日をやっていくことだけで精一杯で、余力はなく先に明るい見通しもない。
そのようにしか見えない。

日々真面目に倦まず弛まず働いている方々に落ち度あるはずがない。
一生懸命額に汗して、それでも暮らし向きが上向かないのだとしたら、これはもう社会が悪いという話にしかならない。

このところずっと、20年くらいだろうか。
社会の状態が思わしくない。

そしてこの先はもっと、駅の階段を押し合いへし合い駆け下りる年配者の数が増えていくことになるのだろうか。

人生を通じ何の苦労もなかったかのような、おボンボン風情の政治家の顔が幾つも浮かぶ。

他の国であれば怒り心頭、階段を凄い勢いで駆け上がって政府に詰め寄り、一体どうなってるんだと問い糺すような話であろうが、日本人は決してそうしない。
今日も明日も真面目一徹、階段を駆け下りる。

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