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KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

まるまる手付かずの第二の人生

指定された時間は午後6時半。
前倒しで仕事が片付いたのでまだ2時間もある。

通り道にあった八尾アリオで待機することにした。

なかに丸善がある。
文具好きで本も好きならちょいと過ごすのにお誂え向きだ。

書類屋にとって本は白飯、文具はお箸。
なければおまんまの食い上げとなる。

ぶらりうろつき新製品の筆記具の書き味を試しつつ、手持ちに優るものはないかと検分していく。
かつて棚を占拠していたHi-Tecは見る影もなく、そこから時代の移り変わりが読み取れる。

手に馴染んだ数本を選ぶ。
このうちどれかは今後長く贔屓にするペンになっていくかもしれない。

そうそう、Ca.Creaの補充分を調達しておかねばならなかったことを思い出す。
文具屋では次から次へと用事が尽きない。

Ca.Creaというのは携帯用のメモノートであるが、サイズを含め見開き感が非常によく、紙質も抜群で非常に使い勝手がいい。
書類屋必需の携行品と言えるだろう。

しかし、丸善では取り扱いがなかった。
その場でアマゾンで注文を済ませる。
試し書きができるという点では店舗に分があるが、品揃えということになればどれだけ大きな文具店であってもアマゾンの足元に及ばない。

次に、書籍エリアに移動する。
平積みの「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」というタイトルの本に目が留まって、即座手に取った。

400ページある。
小一時間で読みこなせる分量ではないが、読み支度程度なら半時間もあれば十分足りる。

スタバが混み合っていたのでドトールに陣取った。

分厚い本を読む場合、まずは読む箇所探しを行うのが先決だ。
ぱっぱとページをめくり、優先的に目を通す必要がありそうな部分に星印を入れていく。

そして不思議なことだが、これだけでも結構内容が頭に入る。
手元に置き本腰入れて読むべきか、いずれそのうち縁があればと書棚に置くかの判断もつく。

本書については、きちんと読むべきであり、わたしだけではなく子にもいつか読ませるべき内容だと思えた。

いまや人は100歳まで生きる。
それが現実だ。

先進国で現在50歳未満の人はかなりの確率で100歳まで死なない。
もっと若い世代なら100歳まで生きるのが当たり前のことになる。

では、どうすれば100歳までの時間を幸せに過ごすことができるだろうか。
それが本書のテーマである。

100歳まで生きる。
まずもって、そんなことは思ってもみないことだった。
わたしの寿命は80歳くらい、それだけ生き永らえられれば御の字、そう思ってきた。

しかし、言われてみれば、100歳まで寿命尽きないことがあっても全く不思議はない。

いままで想像すらしたことのない100年ライフ。
何の考えもなく渡りきれるような長さではない。

本書によって、思案の外にあった可能性に目が向いて、問題意識が顕在化し始める。

百までの長丁場、どう渡りきればいいのか。
我が身だけではなく、子らにも必ず意識させるべき問いだろう。

ざっと頭に浮かぶ。
長期戦に耐久できるよう、まず第一にカラダが丈夫である必要がある。
ガタが来ぬよう細心のケアも欠かせない。

先々のキャリア形成に備えて、学び続ける必要もある。
いまの時間が地続きで次の時間に繋がっていく。
日常の暮らしのなかに能力開発という要素を組み込む必要がある。
当然、頭が明瞭でなくてはならない。

不測の事態が生じても持ちこたえるため、幅広い人的ネットワークも欠かせない。

ざっと流し読みするだけでも思考が活発になる。
が、約束の時間が迫る。
じっくり腰を据えて読みたい、そうはやる気持ちを抑え、わたしは席を立たねばならなかった。

外はすでに薄暗く冷え冷えとし、小雨がぱらついている。
国道25号線をたどって王寺へと向かう。

八尾を過ぎ柏原に入ると、もはや山中。
上流に向かうに連れ川音増し、緑の匂いがますます濃くなっていく。

真っ暗ななか、ときおり山間の高架を大和路線が光おびて走り抜け、あたり一帯がちょっとした峡谷を形成していることが分かる。

だんだん100年ライフのイメージが出来上がってくる。
百歳まで生きるとすればわたしはまだ道半ばにも至っていない。
つまり、これまでは人生の予習で、これからが本番と考えることができる。

老い先短いというのは思い込みで、手付かず50年ボリュームの続編が残されているということになる。

前方のテールランプに導かれるように細い車幅の道を進みつつ、あれも、これもとやりたいことが次々に思い浮かぶ。
生まれたときは、こんな感じだったのかもしれない。

まもなく道の向こう、王寺の街の巨大な光が見えてきた。

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© Pedro Luis Raota