KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

「マーケット感覚を身につけよう」を読めば幸きたる

まもなく朝10時。
この日発売の新刊本を買い求めようと堂島アバンザに向かう。

曽根崎通りを伝って野田阪神から北新地まで歩く。
前日からの好天は一向に衰えず快晴の度は増すばかり。
空一面、鮮やかな青がみなぎって胸がすく。

土曜午前、アバンザはまだ人もまばら。
しんと静まり返っている。

エスカレータで二階にあがって新刊の棚をざっと見渡す。
所望の書籍は見当たらない。
三階に移動して各テーマごとのビジネス書棚にも目をやるが、やはりない。

店員に尋ねるのも面倒であるし、なんだか熱烈な感じで気恥ずかしい。

アマゾンで買えば済む話だ。
心弾むような散歩ができたからそれでよしとする。
もと来た道を引き返す。

野田阪神にも本屋がある。
通りかかったついでダメ元でのぞいてみる。
灯台下暗し。
北新地まで足を伸ばす必要は全くなかった。

野田阪神のブックファーストでは、ちゃんと目立つ場所に陳列してあった。
これでこそ本屋。
二冊ともレジに運んでミッション・コンプリート。

事務所への道すがら、週末のDVDを調達するためTSUTAYAに寄る。
これといって目を引くDVDがない。

DVDについてはネットで注文してある分を待つことにし、書籍コーナに目を移す。
先程買ったばかりの著者の書籍が一冊目に留まった。
これも何かの縁だと手に取った。

TSUTAYAのレジは様変わりしていた。
機械化されてセルフサービスになった。
少しまごつくもサポート店員の手ほどき受けて、なんとか購入に成功した。

南に向いた窓のブラインドを全開にすれば、事務所デスクも青空のもとにあるようなもの。
TSUTAYAで買った本から読み始めた。
ちきりんさんの「マーケット感覚を身につけよう」。
セルフのレジで買った初の書籍である。
愛着のようなものを感じる。

親切に問いかけてくれるような語り口に引き込まれ、わたしは夢中で読み進めることになった。
装丁は軽めだが、かなり重要なことが書いてあって中身は濃厚。
謙虚に学ぶべき内容がぎっしりと詰まっている。

また、伝えようとする主題がほどよく噛み砕かれ、とても読みやすく分かりやすく著述されている。
その表現の技量にも感心させられる。

様々な事例を通じてのアプローチもふんだんで、読み進むほどに理解が深まり問題意識も高まって、微に入り細にわたって懇切丁寧。

読みながら、わたしはいまから20年も前に読んだ本のことを思い返していた。
チャールズ・ハンディの「もっといい会社、もっといい人生」という本のなか、深く胸に刻みこまれた一節があった。

ハンディの子どもたちが大学を卒業したときのこと。
彼は子どもたちに「職を探すのではなく、顧客を探しなさい」という言葉を手向けたという。
なんて本質を突いた言葉なのだろうと当時駆け出しの勤め人であったわたしは強く感銘を受けた。

20年前の感銘が予告編であり、その本編が「マーケット感覚を身につけよう」としてわたしを訪れたようなものであった。

この本もまた、わたしにとってとても大切な一冊となった。

ふと家人のことが思い浮かぶ。
いまごろは二男のママ友らを我が家に迎えて、そのおもてなしの最中だろう。
本書は、わたしなどより彼女にとってこそはるかに有用であるように思える。

彼女が有する「非伝統的な価値」は汲めども尽きせぬ宝の山であるに違いない。
これまで着眼さえしなかった彼女自身の価値について思い巡らせてみる。

本書の好作用は思った以上に深遠だ。

そしてもちろん、子どもたちにとっても絶対的に不可欠な心得となる。
彼らが漕ぎ出す大海原において、あるのとないのとでは雲泥の差。
身を乗り出してでも読むべき本だと言えるだろう。

本の背を見る。
1500円。

こんな得した気分になったことは、久しくない。

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Paris 1936, des gamins, Fred Stein