KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

春の課題図書は『リングにかけろ』

家に着きクルマを停めたちょうどそのとき、家内と二男も帰ってきた。

前夜わたしが訪れた焼鳥名店わびさびで二人して夕食を済ませてきたという。
一品一品が凝っている、家内はそう評し、ぜんぶ美味しかった、二男はそう感想を述べた。

たとえば、うずらを半熟で串にするなど手間がかかり過ぎてあり得ない。
そんなふうに随所に細かく行き届いた工夫が見られ、料理好きの家内にとって学ぶところ大であったようだ。
腹十二分に食べて苦しいと言う二男も満足げな表情をしている。

週末金曜である。
では腹ごなしも兼ね風呂にでも行こうとなって、試験期間続行中の長男を一人残し、そそくさ支度し熊野の湯に向かう。

運転しつつ、やった週末だと家内は喜び、毎日が週末のようなものではないかと男子2人で突っ込んで、それもそうだと阿呆のように皆で笑って、まもなく到着。

熊野の湯は人里離れたような場所にあって、ほどよくひと気もはけて羽根伸ばすに格好だ。
湯場の照明が控え目で、それが幽玄な空気を醸す。

日常の明度が下がるからだろう、ひととき過ごせばほっと心が休まって疲れも癒える。

二男と並んでジャグジーに横たわってぽつりぽつり言葉を交わす。
春の課題図書が村上春樹の「レキシントンの幽霊」なのだと二男が言う。

すでに二男は読了済みだ。
所収の「沈黙」という短編が素晴らしい。

「沈黙」について話すうち、ボクシングつながりでふとわたしは思いつき二男に提案した。

「リングにかけろ」という名作がある。
それを春の課題図書として父から君に進ぜよう。

「あしたのジョー」も「がんばれ元気」も二男はとうの昔に読み終えた。
だから当然、次に手に取るべきなのは「リングにかけろ」以外にあり得ない。
これでボクシング名作三部作が完結となる。

二人で移動し湯の場所を変えながら、わたしは二男に「リングにかけろ」がどれほどの名作であるのかを説く。
戦いをテーマにするここ20〜30年の漫画の源流がここにある、そういって過言ではない。

ちびっ子の頃、どれほど少年ジャンプの発売日である月曜を待ち侘びたことか。
「リングにかけろ」のコミックが出れば先を争って買いに走り、ちびっ子同士で話す話題は、「リングにかけろ」でもちきりであった。

めちゃくちゃ強い登場人物たちや彼らが繰り出した空前絶後な技の数々を思い返せば、中年となったいまも心躍る。
もし小学生当時の友だちたちと再会できれば、「リングにかけろ」の話で大いに盛り上がれるに違いない。

わたしが力説するものだから二男の気持ちも高まって読もうという気になったようだった。
善は急げ。
風呂をあがってすぐ、アマゾンで全巻を買い求めた。
もちろん配送先は事務所。
家に届けばことである。

注文終えてますますウキウキ感が強まってくる。
届くのが待ち遠しい。

実はわたしも読みたいのであった。

これで二男と共通の話題がまた増える。
ブーメンランフックやギャラクティカマグナムやスペシャルローリングサンダーについて、我が子と語らえる日が来るなんて、ちびっ子の頃には思ってもみなかったことだった。

まさしく、夢のような話である。

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Rui Palha