KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

人物に係り結びしない言葉の空疎

この日が新年度初日。
が、初日だからといって未明の時間に元気よく起きられるものではない。

沈鬱という名のトンネルをくぐってはじめて目が覚めて、白み始めた空を目にしてようやく気分が明るくなってくる。

弁当バッグを携えてクルマに乗り込む。
なかには、朝昼二食とアロマの瓶詰め。

ラベンダーは心に調和もたらす効果で知られる。
月曜朝にお誂え向きだと言えるだろう。

事務所に入ってラジオを聴きつつ作業を始める。
たいてい朝はMBSラジオの朝からてんコモリを流す。

朝の紙面に対してするパーソナリティ子守さんの寸評がなかなか面白く、新聞に目を通す暇もないときなどとても重宝する。

語り口は柔らかだが批判精神旺盛な子守氏である。
随所で耳をそばだてるということになる。

この朝、氏は朝日新聞9面を取り上げた。
新入生に向け贈る言葉が綴られた関学の全面広告である。

全文を読んで子守さんは言った。
こんな文章、なんも響けへん。

あまりに端的辛辣な言葉であったので、つられてわたしも新聞を広げて一読してみた。

確かに子守さんの言うとおり。
ポジティブワードを思いつくまま端から端まで並べただけの、だから、ひとつひとつ見れば素材としていい言葉なのに羅列が過ぎて互い潰しあい、よって共鳴からは程遠く、全体として空疎に響く代物と成り果てていた。

結果的には陳腐な常套句で飾り立てたマンションポエムと変わらぬ印象であって、胸に刻まれるべき詩的喚起が得られるどころかどちらかと言えば白けて赤面してしまうのがオチという出来栄えと言えた。

続いて子守さんは、この広告と対比させるように、同じく朝日新聞のひと欄に話題を移した。
この日のひと欄は、弁護士の亀石倫子さん。

「多数派に迎合せず困難な道を選べ」と娘に説いた亀石さんの父の言葉に併せて、「枠にとらわれない柔軟な考え方が最大の強み」と評される亀石さんの弁護士としての取り組みが紹介される。

ひと欄の枠の大きさは全面広告に較べるべくもないが、読み終えて「誰もが正しいと思う捜査を疑い、どんな相手にも偏見を持たない」との彼女の信条に深く学ぶような思いとなった。

新年度初日、そういった芯ある職業者の横顔に触れる方が、歯の浮く美辞麗句を眺めるよりも、遥かに益あって励みになる。

人物に係り結びしない言葉は空っぽで響かない。
子守さんの辛口によって、そう気付くことができた。

早起きは三文の徳。
子守さんもまた「多数派に迎合せず困難な道を選ぶ」気質に違いない。
希少価値あるパーソナリティであると言えるだろう。

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