KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

男二人で鍋をつついた静かな夜

この日は終日クルマでの移動となった。

朝一番、まずは南下し松原で業務。
続いて北上し、昼は宝塚で過ごす。
そして南下し次の目的地は阿倍野。

時間を厳守しつつ運転するのは結構疲れる。
つつがなく、つつがなく各ポイントを通過していかねばならない。

時間が押せば押すほど何でもないことに手に汗握ることになって、気が張って仕方がない。

そのようにやきもきしつつも順調に渡り歩いて、裏寂れたような阿倍野の一角に到着したときには次の予定までに半時間ほどの余裕が得られた。

ガード下のパーキングにクルマを停めた。
日陰になっていて休憩するのにちょうどいい。

エンジンを停め、クルマの窓を全開にした。

最初のうちは中の様子を探るみたいにそよ風が窓付近を行きつ戻りつしていたが、やがて断続的に入り込んで通り抜け、しまいに車内は風が自由気ままに行き交う通り道となった。

座席を倒して目を閉じる。
風に優しく慰撫されて、どこか遠くの草原で寝そべるかのような心地よさである。

時刻となって起き上がる。
気疲れはすっかり吹き飛んでいた。

阿倍野での業務を無事終えて、今度は西宮に向かう。
サム・スミスのイン・ザ・ロンリー・アワーを流しつつ阪神高速をひた走った。

自宅にクルマを停め、その足で駅まで歩いて電車に乗ってJR住吉駅で降りる。

この夜のお店は、もつ鍋ごりょんさん。
男二人で暖簾をくぐった。
他に客はない。

奥の座敷で向かい合って鍋をつつき、無事順調なスタートを祝って静かにお酒を酌み交わした。

料理は美味かったが店員さんに愛想なく、その素っ気なさも手伝って、静けさに深みが生じた。
相変わらずわたしたちの他に客はなく、最後の最後まで客は来なかったので、たった二人で店を貸し切ったようなものであった。

閉店の時間が近づくと、そそくさ片付けが始まって、鍋に野菜が残っていてわたしは食べるつもりであったが、問答無用といった様子で下げられた。

早く帰りたい店員さんの気持ちも分からないではない。
ではそろそろ解散ということで店を出て駅まで歩く。
手を振って別れ、六甲ライナーの改札に向かうその背を最後まで見送ってからわたしはJRの改札に向かった。

静か染み入るようなこの日の夕飯は、見送ったその背とともに長く記憶に留まることだろう。

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Jean Dieuzaide, Concorde - Essais de roulage 1969.