KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

栄えある一位は、別格であった

観客席の最下段まで降りてきてそこで一礼し、一段一段かけ上がっていく。

甲子園球場のビール売りは、笑顔さわやか愛想よく皆が皆とても感じがいい。

 

同じビールを売るのであっても、そこは客商売。

売上には個人差がつきまとう。

 

1位から5位の上位陣には右肩にその順位が記されている。

 

何年も球場に通う馴染みによれば、上位3人は不動。

天与の才がものを言う世界。

馴染みの方は甲子園球場を訪れる度、そう実感するのだという。

 

ランク外も含めビールの売り子が下から上へ、まるでランウェイを闊歩するみたいに順番交替に駆け上がっていく。

野球を横目に、わたしは順位に着目しつつビールを買う。

 

何度も何度もビールを買って、だんだん上位陣とランク外を分ける境界線のようなものが見えてきた。

 

ランク外の愛想は漫然としたもので、どこか猫パンチ的な気弱さが混ざっている。

それに対し上位陣の愛想のベクトルはぶれることがない。

基本に忠実なキャッチボールのごとく、相手の胸に真っ直ぐ届く。

 

つまり、ランク外の者が受け身でビールを運ぶのに対し、上位陣はビールを配達していると言えるだろう。

戦略的な経路とタイミングを頭に描いて、的確なキャッチボールを繰り広げるからこそ、売上も上がっていくことになる。

 

そして栄えある一位は、別格であった。

笑顔や愛想をふりまかない。

一見、ビールの販売に積極的でないように見える。

 

が、一声かけてビールを買ってみると違った。

ちょっとしたやりとりで交わす言葉にあたたかみがあって、なんだかほっとしたような気持ちになれる。

同じビール飲むなら、ほっとできる方がいい。

 

「ほっ」という付加価値ついたビールを彼女は販売しているのだった。

笑顔や愛想をふりまくよりも、その「ほっ」を求める人が誰なのか見定めるほうが話が早い。

おそらく彼女はぱっと見て「ほっ」が必要な人を判別できるのに違いない。

 

やはり天性。

教えて身につく類の能力ではないだろう。

 

甲子園球場は野球以外にも見どころ満載。

アフターケアでヘパリーゼが必須になるわけである。

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Germaine Chaumel, Toulouse 1940s.