KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

生きてるだけで丸儲け

いつもどおり朝4時に目が覚めた。

一夜明け、体調は元に戻ったようだった。

 

始発を待ち電車で事務所に向かうことにする。

週末土曜、家にいてもすることがない。

 

昨晩のこと。

仕事を終え、ジムで一汗流した。

いつも着るジャージが見当たらず、かといって運動しないで済ますのも気持ちが悪い。

 

それで夏場の出で立ち。

短パンとTシャツでカラダ動かすことにした。

 

ジムのなかは暖かい。

だからその恰好で何も問題はなかった。

 

走って気持ちよく発汗し快調。

が、30分ほど走ったとき、急に悪寒を感じることになった。

 

やはり、冬。

短パンとTシャツは露出が過ぎたのかもしれなかった。

 

本来はもっと走って筋トレもするが、早々に切り上げることにした。

冷えを感じるなか薄手のウインドブレイカーだけ羽織ってジムを後にした。

 

事務所はすでに無人。

暖房をつけ、ペリエをごくりと喉に流し込んだのだが、喉に詰まったみたいになって、急に苦しくなった。

 

走り終え収束していくはずの鼓動が勢いを増すかのようであって不穏を覚える。

頭はぼんやりのぼせたみたいになって、肩から首筋、口の中にかけ、何かに締め付けられるような違和感がある。

 

これはやばい状態なのかもしれない。

こんな風に思いがけず、人は死ぬのだろうか。

 

まさかそんなはずはあるまい、ちょっとカラダが冷えただけであり大したことではない、そのような確信が心中の大勢を占めるが、一抹の不安は拭えない。

 

じっと伏せるような姿勢で頭を巡らせる。

 

冷えではなく、空腹。

カラダに生じている違和感は、腹が減ってのことなのかもしれない。

いったんそう思うとそうに違いないと思えてくる。

 

前の晩はなか卯で済ませた。

今夜は順番で言えば松屋になる。

 

額に冷や汗を浮かべつつ並びにある松屋に向かい、食べれば収まるに違いない、そう信じてカルビ定食を平らげた。

 

しかし、あては外れた。

やはり素人。

お腹満たしたところでどうにかなるものではなかった。

 

事務所に戻ってしばらく休むが、具合がましになる兆しがない。

 

何か、大事なことを言い残しておくべきだろうか。

子らの顔とともに、そんな考えがふと頭に浮かび、同時に日頃日記を書いていることにも思い当たった。

 

子らに向け友人に向け親兄弟家族に向け、日頃から会えた喜びと感謝の念を述べている。

この期に及んで付け足すことは何もない。

 

そう思うと気持ちが安らいだ。

来週火曜の食事の約束は心残りであるが、それ以外思い残すことは何もない。

 

もうどうなろうがどちらでもいい、そんな風に思えた。

 

だから、違和感あっても怖がらず普通にしてみることにした。

もしかしたら、普通にするのが、平常に戻る最短コースであるかもしれない。

そう考えた。

 

動悸は相変わらずであったが構うことなく違和感まとったまま駐車場まで歩いた。

クルマを発進させる。

行き先は、和らかの湯。

 

冷えが原因であれば、風呂で温もればこの動悸は解消するのではないだろうか。

そう期待し、いつものとおり炭酸泉につかった。

 

やはり思ったとおり、人心地。

これで大丈夫と湯にカラダを預けくつろいだ。

 

ところが、ひとしきりつかってジャグジーに移ろうとして、立ちくらみに襲われた。

一瞬、首から上がなくなったのかといった感じで、意識が消えかかった。

 

裸で死ぬのは勘弁、そう思い、ふらつきながらも、まっすぐ脱衣所を目指した。

 

幸いこの日、イオンに立ち寄り新品の肌着を買い込んでいた。

 

行き倒れて遠くに旅立つにしても、肌着がまっさらであれば、紳士として最低限のエチケットを守れているように思え、覚悟もできた。

 

俯くと頭が空白になるような心もとない感覚のなか、何とか持ちこたえ、服を着終えた。

 

人間、ひとつ実現すると欲が出る。

せっかくだから家まで帰ろう、そう思った。

 

もし万一、我が身にラストシーンが迫っているのだとしたら、そのスクリーンに映るべきはわたしの子らであるべきだった。

 

収まらぬ動悸とふらつく頭のまま、クルマを走らせた。

無事家までたどりつくも、玄関を入ってまた平衡感覚が失われそうになった。

 

下を向くと意識が朦朧とするのだと気づき、上を見ながら階段をあがった。

 

長男は自分の部屋で勉強中だった。

机に向かう姿勢からカラダを反転させて、彼はわたしを見た。

よお、と互いに言葉を交わす。

それで十分だった。

勉強頑張れよとだけ言葉を続け、わたしは扉を閉めた。

 

とにかく横になろう。

そう思って、自室のベッドに臥せった。

動悸は引き続き早鐘状態のままである。

やはりやばいのだろうか、依然、不安は拭えない。

 

まもなく二男が帰ってきた。

足音が近づく。

わたしの寝室に入ってきて、彼は横に寝転がった。

 

熊野の郷に行っていたということだった。

 

男横並びになってわたしは二男の話に耳を傾けた。

 

日曜に友だちと映画に行く。

キングスマンを観たいが、友だちはスターウォーズを主張した。

ジャンケンの結果、スターウォーズに決まった。

だから、キングスマンは一人で観に行く。

 

不思議なことであるが、二男がするそのような話を聞いているうち、動悸はゆるやか落ち着きを取り戻し始めていた。

 

このシーンがラストにならずに済むのだと、ほっと一安心、今度はほんとうに心の安らぎを覚えた。

 

そうして、無事、朝を迎えることができた。

体調は万全。

 

今朝はちゃんとジャージを着込んで温かくしてジムで走った。

 

天気良く爽快、非の打ち所のない週末土曜。

生きてるだけ丸儲け、そう実感しつつ過ごしている。

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Melisa Sz, Moon