KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

医療界の水先案内人

昨日、神戸へ向かった。
時間より早く着きそうなので元町で降り目的地まで歩くことにした。
空は晴れ渡り陽射しが強い。
しかし、いったん日陰に入ると、吹く風にはっきりと秋の清々しい凛とした冷気を感じる。

通りが広く、さすが由緒ある港町、どこをとっても隅々異国情緒の余韻が残るハイカラな町である。
学生時代をもう一度過ごすなら、札幌もいいが神戸もいい。高田馬場は所詮ババなのさ。

商店街から横丁をのぞくと、海に臨むポートタワーが姿を現す。
左手には世界と通じる神戸港が広がり、右手に緑濃い山々が迫る。
山と海を行き来する風で、神戸はいつだって清涼だ。

神戸大学医学部前、ハザマ薬局神戸がんセンターが開局する。
午後2時から、そのオープニングセレモニーが開催されるのだ。

ちょうど5分前に到着した。
しかし、どうも人の気配がない。
既に中でセレモニーが始まっているのだろうか。
扉を開けると、留守番の職員がいて、会場はここではなくクラウンプラザなのですよ、内覧会が3時から始まりますので、裏の喫茶店でお茶でも飲んでらして下さい、とコーヒーチケットを差し出してくれる。

陽気のせいだけではない、背中に冷たい汗が幾筋か流れる。
チケットを固辞し、すぐさま通りに走って、タクシーを探す。

ハザマ薬局を運営するファルメディコ株式会社の外科医狭間研至社長の話を聴きに来たのである。
コーヒー飲んでる場合ではない。

私の慌てた様子で感づいたのかタクシーが向うからやってくる。
クラウンプラザへ行ってくれというが、運転手は?と首を傾げている。
iPhoneで検索しそれがANAクラウンプラザホテルという名称だと分かる。
ANAというワードで運転手は諒解してくれた。

北野異人館を通る。
子が小さいとき、遊びにきたことがあった。
道々に見入り感慨に耽る。
ちょっとした思い出旅行みたいだ。

10分で到着。
ANAクラウンプラザホテル、それは、いつも車窓から見上げていた、あのそびえ立つ、神戸のランドマークではないか。

山をも見下ろす35階。
ファルメディコ株式会社の狭間研至社長が既に、ハザマ薬局神戸がんサポートセンターの趣意説明を始めている。
いつものごとく、スライド駆使する華麗鮮やかなプレゼンだ。

専門的な内容も、背景や全体の位置づけ、経緯といった説明が付加されるので、頭に入りやすい。
何も知らない状態であっても、構図が分かり、そうすると、細部も少しは分かってくる。
細部が分かると、更に全体像がイメージできる。
地図上で遠景、近景への往還を巧みに誘う、練達の水先案内人といった様である。

理路明晰な弁舌に、随所、柔らかな関西弁が折り混ざる。
折々、聴衆の声を求め、その掛け合いからテーマが双方向で動き内容が更に深みを増す。
直感的に、一つのイメージが浮かび上がる。

大阪といえばお笑い文化のイメージが強いが、歴史をたどれば、お笑いは一つの側面でしかなく、多種多様、異人ともいうべき人々が交流する中、独特の文化が育まれ、コミュニケーションの機微濃淡がどこまでも豊かに織り成される日本始原の商都であった。
戦後の経済成長の過程で、地方がどんどん東京化してゆくなか、大阪もその例外ではなかったけれど、まだまだ独特の風土とその遺伝子は根絶やしにはなっていない。

お笑い程度の話に留まらない、奥深い上方芸といったものが、命脈を保っていて、これこそが、日本の明日を切り開く切り札となる。
東アジアはじめ世界に対し、如才なく立ち回りしぶとく押し引きするような交流ができるのは、商都大阪のカオスで培われた上方芸の系譜を引く者であるに違いないのである。

そして、大阪大学医学部出身の狭間研至である。
最上級の知性に、洗練された上方芸が加味され、そこに使命が宿る。
となれば、これはもう、次代の日本を担うキーパーソンだ。

様々な利害対立を背景に、医療においては基本法すら制定されておらず、日本医療の理念を論ずるにはいちいち憲法を持ちだし、生存権や生命権といった抽象的な話から始まるというシュールな状況のままである。

そういった中、在宅医療を推進するというお国の方針に沿い、地域に密着する薬局が、薬剤師というマンパワーを用いて在宅医療に貢献してゆく、国民の利益につながり、経済合理性もある、そういった当たり前の話を狭間研至という影響力有する人物が、先頭に立って説いてゆく。
その当たり前の積み重ねが、お国の医療の理念として醸成されてゆくのだろう。

学校の中、最も優秀だった人間がほとんど根こそぎ医療の世界に進んだ。
そのような印象がある。
それほど優秀な集団には、個々向き合う患者の健康だけでなく、地域といった単位に留まらず、根本的には制度に対して、また、将来的には例えば世界に対しその卓越した能力を発揮し轟かせるといった責務があるとは言えないだろうか。

狭間研至が、全体を見渡し、大局的な見地から、具体的な一石を投じ続けてゆく。
今後更なる獅子奮迅の大活躍が始まる。
水の都大阪が生んだ狭間研至の水先案内の手さばき、これはもう目が離せない。