KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

中学受験を振り返って(ヒッチハイク)

温泉からウォーキングしての帰途、43号線と北港通りの交差点で学生と思しきヒッチハイカーをみかける。
「西へ」と段ボールに大書きし、それを高くかざして無言で訴える。

少し離れた背後からその様子をうかがう。
くしゃみを我慢しなければならない。
鷲尾耳鼻咽喉科で昨年1月に鼻の粘膜のレーザー処置をしてもらったので昨年に引き続き2月は全く花粉症に悩まされることはなかった。
しかし、3月は花粉が猛威を奮う。
さしものレーザーでも多少の症状は覚悟しなければならないだろう。
世の大半の人の鼻が間もなくそこかしこでしつこく詰まり始める。
何て国だ。

いつまでたってもヒッチハイカーの青年のために停車するクルマなど皆無だ。
全ての車両が一瞥もくれずに通り過ぎてゆく。
乗せてやろうなどという殊勝なドライバーなんて簡単に見つかるものではないだろう。

湯冷めしてはいけない。
その場を去りつつ考える。

こんな辺鄙な43号線沿いにいるということは、ここまでヒッチハイクを成功させて乗り継いできたに違いない。
もしかしたら彼は早大生で東京からここまでヒッチハイクで渡ってきたのだろうか、そんな想像が浮かぶ。

人の情味や、クルマに狙いを定めるコツ、車内での会話とマナー、別れた後のお礼など、無形の学びが数多く得られる体験だろう。
何も机に座ってするのだけが勉強ではない。

そして我が身を振り返る。
私自身も、ちゃっちい段ボールの切れ端に何々事務所とだけ書くヒッチハイカーみたいなものではないか。

「お勤めは?」
「書類関係の事務所です」
「(無言)」
「いやこう見えても、カタギの職業ですよ、説明は難しいですが、まあ特殊な業界の書類屋です」

分かりやすい所属先がないし、ポピュラーな職業でもないので、いつだって素性説明するのは難しい。
世の中の大半の人はわたしのような書類屋などに用はない。

そんな特殊ケースのような在り方であっても、なんとか渡り歩いていけている。
これはまさに、目に見えないヒッチハイクそのものである。
何か希有な巡り逢いと思慮を超えた縁の力で、なんだかよく分からないが、どこかへ運ばれていく。

自分の意志と戦略はないのか、と混ぜっ返されそうだが、人間一人の力を買い被るのもたいがいにした方がいい。
まさか、人間関係においてこうしたいああしたいと策定した風に事が運ぶとでも思っているのだろうかと逆に問い返しておこう。

つづく