KORANIKATARUTOKIDOKI

子らに語る時々日記

劣悪を直視する


マイケル・ナイマンを流しつつ軽めにこなした仕事の仕上げに入る。

今日も阪神甲子園駅を降りれば家内がクルマ横付けで私を待つ。

このお迎えをプールへの連行と私は捉えていたが、善意で解釈すれば、優しい「彼氏」がわざわざ迎えに来てくれるようなものであり、少しはありがたいことであるのかもしれない。

弁当の量が少ない、シャツの洗濯が終わってない、ビールが足りない、風呂がぬるい、泳ぐのはゴメンだ、など軽い気持ちの難癖も、見方変えれば、ちょっとこの亭主、我儘にも程があるのではという気もしないではない。

毎年恒例の激ピークの忙しさが止みつつある。
余裕は大事だ。
人間関係の真実に気付かせてくれる。


今朝、久しぶりに新聞をぺらぺらめくった。
これも余裕の恩恵だ。

日頃は新聞などには目もくれず放置したまま仕事にかかる。
どのみち目にとまる記事もそうそうない。
放置すると言っても、鉄板焼きや鍋の下に敷けば飛沫よけになるので持っては帰る。

朝日新聞に私立中学だと年間の学習費が一人129万円という記事があった。
そうそう、まさしくそうなのだが、そんなにかかるはずがないと後輩達にはなかなか信じてもらえなかったのでこの情報は有用だ。

学校が公表する学費などつまりはミニマムなものであり、諸々更にかかるのである。
ちょっと思い浮かべるだけでも、部活の用具や各種アクティビティに要する費用もあれば本代、交通費、それに交際費もかかれば別途食費も必要となる。
新陳代謝が活発なのは身体だけのことではなくメガネは壊すし、靴もなくす。
あれやこれやと嵩めば月十万などあっという間である。

おそらくは暗黙の基準値として月額十万という需給の了解ラインが存在するのだろう。
小学生でも高学年となれば塾通わせればそれくらいはかかり、金銭的負担に何ら違和覚えることもなく中学へと進むことになる。


相当に重い負担ではあるが何のこれしき、この程度のことで、費用対効果を云々するのは図々しい話だろう。
吉と出るか凶と出るか、そんなことはあらかじめ分かることではない。
将来、職業生活上の大凶は回避できるかもねという蓋然性に対する負担の許容度は各自異なる話であるからつべこべ言っても始まらない。

お金のことなんて他愛もない。
大凶の方こそ、心して恐れるべきだろう。

大凶的な職業人生は私の専門分野である。
一家言どころではない。


学校の先生が、差別はいけません、人はみな平等です、と唱えたところで、大阪の実像を見渡せば、キレイ事など世間知らずの戯言、お笑い草としか思えない。
もちろん概念としてはたいへんに重要である。
その理念を結実させてきた人類の遠大な歴史と献身してきた偉人への敬意を決して忘れてはならないし、人類の一員としてその実現に少しでも寄与すべきであろう。

しかし一方で、現実を冷徹直視しなければならない。
大阪だとうっかり勘違いしてしまいそうになるが、平等であることと低きに留まることは似て非なるものなのである。

劣悪な環境や、そのような劣悪を生む人々が実在する。
そのようなことすら思ってはいけない、と小学校の先生は言うかもしれない。

小学校の先生は、君たちの将来に具体的な責任を負うわけではないからなんだって言えるのだ。
あれこれキレイ事言う先生は、ふと頭に浮かんだ程度、気軽に発言したことを、聞かされた児童が一生記憶に残し影響まで受けるかもしれないと想像することはないのである。


他に行き場所が見いだせず、どこまでも根こそぎにされ、劣悪に絡め取られ続ける人生は、これは最悪である。
祝福されこの世に生を受けたはずが、どこでどう間違ったのか、ボロクソ罵られ足蹴にされ底辺の辛酸を舐めなければならない。

劣悪を寄せ付けない力が、必ず必要なのである。
親がいつまでも生きているわけではない。

劣悪な場所や人があると知っておくこと、うっかり迷い込まないこと、迷い込んだとしても手出しされるような腑抜けではないこと、そして、あっさりにこやか手を振ってそこを出て行くことができること、、、ネガティブな側面ではあるけれど、勉強する意味はそこにある。
(ポジティブな側面で言えば、世のため人のため、ということになるだろうか)
そして勉強すればするほど、強い仲間が周囲に出現し、劣悪の付け入る隙などますますなくなる。

「劣悪」から脱するために勉強したいと切望し、しかしそれでも勉強することが夢のまた夢という子どもたちが世界に一体どれだけ大勢いることだろう。
そして、そのように願い、しかしかなわなかった少年少女らが歴史のなかどれだけ大勢いたことだろう。

この日本にあって、勉強しないなど、ありえないことではないだろうか。

我が子を劣悪から防御するためなら、月十万程度なんて世間の親にとって何でもないことなのである。